2022年11月18日に公開された映画『ある男』を観ました。
映画『ある男』の基本情報
原作：平野啓一郎『ある男』/2018年---第70回読売文学賞受賞作品
監督：石川慶
脚本：向井康介
制作：2022年
上映時間：121分
おもな出演者
城戸章良：妻夫木聡
谷口里枝：安藤サクラ
谷口大祐(偽物/ある男X)：窪田正孝
谷口悠人：坂元愛登
武本初江：山口美也子
谷口恭一：眞島秀和
中北：小籔千豊
城戸香織：真木よう子
小見浦憲男：柄本明
後藤美涼：清野菜名
谷口大祐(本物)：仲野太賀
なかなか重い内容だった
私は、妻夫木聡さん、安藤サクラさん、窪田正孝さんの3人がバラエティー番組で宣伝をしているのをチラッと見ただけ。
「愛したはずの夫は、まったくの別人でしたーーーー」
というキャッチフレーズだけでまったく予備知識ゼロの状態で鑑賞。
自分の中にある深層心理をえぐられた映画でした。
映画『ある男』のあらすじ
ある雨の日。
離婚をし、宮崎の実家に息子を連れて帰ってきた里枝(安藤サクラ)は、店番をしていた実家の文房具屋で、スケッチブックを買いに来た「大祐」(窪田正孝)と出会う。
やがて里枝と「大祐」は再婚。
息子・悠人(坂元愛登)と「大祐」とのあいだに授かった娘・花(小野井奈々)、母の武本初江(山口美也子)の5人で幸せに暮らしていた。
しかし、結婚生活4年ほどで「大祐」は不慮の事故で亡くなってしまう。
1年後の法事。
絶縁状態にあった、実家の伊香保温泉の旅館を継ぐ｢大佑」の兄・恭一(眞島秀和)が訪ねて来た。
そして仏壇に飾られていた遺影を見て、恭一が「大祐じゃない。」と言ったことで、里枝は、結婚して娘までもうけた夫が、全くの別人だったと知る。
里枝は、元の夫との離婚の際にも世話になった弁護士・城戸章良(妻夫木聡)に、死んだ夫が何者だったか、調査を依頼。
何者か分からないので「大祐」と呼んでいた男を「X」と呼び、調査を開始した城戸。
伊香保、大阪、名古屋と飛び回り、「X」の正体と、別人として生きねばならなかった理由を探り当てていくーーー。
その理由と正体を知った時、家族として短い時間一緒に生きて来た里枝と悠人は何を思うか？
「X」の生きてきた足跡は、調査をした弁護士・城戸にも、大きな衝撃を与えるのだったーーー。
…というお話です。
柄本明と妻夫木聡の一対一のド迫力シーン
城戸が「X」のなりすましの調査をするうち、柄本明さん演じる戸籍交換ブローカーで逮捕された小見浦にたどり着きます。
拘置所まで面会に行くシーンで、小見浦が、城戸に面と向かって差別的なことを何回も言い放つ。
大正生まれの私の祖母の口からは、正直よく聞いていた言葉ですが、最近聞いていませんでした。
言葉自体は差別的ではないが、差別的な言い方というか見下したようなバカにしたような言い方を小見浦がするのです。
久しぶりにその言葉を聞き、ソワソワしました。
理性で怒りを抑える城戸ですが、挑発的な態度で何度も言う小見浦に、城戸もついにキレる。
そして小見浦のことを「犯罪者じゃないか！」と見下した言葉を投げつけます。
普段から、人権派弁護士として活動している城戸。
小見浦を対等に見ず、犯罪者というフィルターで見て、差別していることに気付かされます。
二人が対峙するシーンが2回あり、常に小見浦が若造の城戸に対して挑発的な態度を取ってわざと怒らせるので、ハラハラしました。
挑発に乗って怒りの態度を露にする城戸を見て、偽善者ぶってる私も、差別してる気持ちがあるんじゃないか？と自分の内面・深層心理をえぐられるような気がしました。
嫌な気持ちにはなりましたが、見応えがありました。
差別のシーンは随所に
差別するシーンは、柄本明さんが登場するシーンだけじゃありません。
城戸が、妻の父と話す場面にも。テレビニュースを見る場面にも。
小籔千豊さん演じる仲間の弁護士との会話のなか。
「Ｘ」が、宮崎にやって来て近所の噂になるシーンのなかにも。たくさんちりばめられていました。
何でもないように、いつも通りに流れていくような場面も、差別していると分かっている人間には、キツイ場面です。
もともと関西弁は飾らない言葉だし、自分も関西弁を話す人間なので、関西のなまりで話される差別的な発言は、私の心に深く突き刺さりました。
救いとなった里枝・悠人親子と後藤美涼の存在
この映画全般を通して、人の中身を見ず経歴や見た目で判断する言葉が非常に多かったです。
そのなかで救いとなったのが、
- 「X」と愛し合い結婚した里枝と、その息子の悠人。
- 本物の「谷口大佑」の元恋人・後藤美涼(清野菜名)。
この3人が、救いの存在になりました。
里枝と悠人は、「X」の経歴を知っても、一緒に暮らして彼から受けた愛情を信じ、これからも生きて行こうと前向きになっていました。
美涼は、本物の谷口大輔が違う名前になっていても、彼に会いたい気持ちを貫いていました。
経歴など関係ない、彼ら自身をちゃんと見ていた存在。
全体を通してしんどい内容だった『ある男』のなかで、この3人の存在がいてくれただけで、暗く沈んでしまった心を明るくしてくれた存在でした。
謎が残る
最後に、妻夫木聡さん演じる城戸が謎の行動をとります。
最後の最後になに？？
せっかく里枝親子と美涼で気持ちが救われたのに…。
みなさんはこの謎が解けますか？？
城戸はどんな行動をとったのか？
気になる方は、直接ご覧になってみてください…！
以上、映画『ある男』を観た感想でした。
